機内

機内には様々な目的で搭乗されているお客様がいます。

約500席ある機材で3レグ(1便のことを1レグ)担当すると、もし全て満席であれば約1500名のお客様と接する機会があるということになります。
LCCの小型機で約180席、MAX4レグ担当すると約720名のお客様と顔を合わせます。

本当にド満席になることはなかなかないとはいえ、お客様の数だけそれぞれの目的があり、それほどの数のお客様と接していればどうしても対応の難しい方に遭遇するのも想像に容易いと思います。

今回は私の経験から、どうにも困ったちゃんなお客様のお話をさせていただきます。

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ログブックのお客様

ログブックとは飛行機好きのお客様が搭乗される際にご自身で搭乗便の情報をまとめたり、クルーに情報やメッセージを書いてもらうためのノートのようなものです。
最近ではすでにテンプレートで項目が記入されているものも販売されているようですね。

そのログブックを巡って以前お客様Aさんとトラブルがありました。

Aさんはボーディング時、他のお客様と同じように私にログブックの記入を依頼されました。
その際は特にご機嫌も悪くなかったように思います。

短いフライトでしたので、もしかするとご希望に添えないかもしれない旨をお伝えすると、それはもちろん構わない、また降機の際にボーディングブリッジを渡ったところで待っている、何分かかっても問題ないとのことでした。

航行中、Aさんに喜んでもらいたかった私は、できる限り時間を見つけてフライト情報を記入し、全キャビンを回って他のクルーにも協力してもらいました。

安全上の理由からフライトデッキ(操縦室)にはお客様のものを持ち込むことができなかったため、パイロットのサイン欄のみ記入出来ず、降機の際にフライトデッキのドアが開いたらパイロット達にお願いしようと思っていました。

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降機が始まり、私は先にその旨をお客様にお伝えすべきだと思い、ブリッジを渡りAさんの元に駆けつけ、パイロットのサインをもらう時間を少し頂きたいとお伝えしました。

すると、ボーディングの時とはまるで別人のように怒り狂って、「お前は何もできないクズだ」と私を怒鳴りつけました。
どうやらお時間を頂くための確認は不要で、パイロットにすぐさまサインをもらってこいとのこと。

忙しかったとはいえ確かにフライト中に一言確認しておくべきだったと反省し謝罪したところ、「その時間ももったいない、お前は使えないクズだから上の者を呼んでこい」とのことでした。

チーフは降機のご挨拶で手が塞がっている中、私がお願いすると快諾してくれ、一緒に謝罪してくれました。後ろにはパイロット二人もおり、心強く感じました。

すると、Aさんは態度が急変し、今度はニコニコとしながら、パイロットに向かって「ナイスフライト!」とおっしゃったのです。
その後は何事もなかったようにご機嫌で帰って行かれました。

私は信じられない思いで呆然とその様子を見ていましたが、チーフの「ああいう人っているよね」という一言に少しだけ救われました。

新人の私は、忙しいと一つのことに集中してしまい他のことを考える余裕がなくなってしまいがちでしたので、航行中、ログブックを書いている間に少しでも先回りしてAさんへ確認できていればまた違ったのかな、と思います。

離してくださらないお客様

国際線に乗務すると、入国する際に必要な書類を配布するのも大切なお仕事の一つとなります。ほとんどのお客様がご自身で記入してくださり、わからない箇所があれば私たちクルーに質問をされます。

ですが、私がマニラ線に乗務した際にいらしたお客様Bさんは曲者でした。

書類を配布するやいなや質問攻め。
全ての項目を一緒に書いてほしいと言われ、アルファベットの書き方まで聞かれる始末。

もちろん本当にわからないお客様には後ほどお時間をいただいてご案内するなどの対応をしますが、名前の箇所は自分で記入出来ていたので確信犯なのが困りました。

クルーは書類配布後もミールやドリンクのサービス、機内販売等に追われるので、一人のお客様に独占されてしまってはサービスが滞ってしまいます。

お隣の親切なお客様にお願いし、なるべくご自身でご記入を進めてもらうことにしましたが、それだけでは終わりませんでした。
今度はミールサービス中に猥褻な雑誌を見せてきたのです。

いよいよクルーの業務の妨害行為に当たるとし、チーフから注意をしてもらうことでやっと一件落着。
とはいえ、私の気持ちとしてはなんとも言えないモヤモヤを抱えたまま終了しました。

まとめ

実際に出会った困ったお客様をご紹介しました。
こんな困ったお客様がいる一方で、むしろお客様に助けられたり嬉しくなるようなお言葉をいただけたり、毎フライトごと考えさせられ・成長できる素敵な仕事だと私は思います。

時には参ってしまうこともありますが、それも接客業の面白さと自分の糧に出来れば素晴らしいクルーになれるでしょう。

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