5月のある日のことでした。
その日はスタンバイで、早朝から会社から電話が掛かってくるのを待っていました。
ベッドに横になっていると会社から電話が入りました。
まさかこの電話から、大変な1日が始まるとは…
その時は想像すらできませんでした。
欠航の影響で行きの便はお客様ゼロ!!
呼ばれたのは、弊社が持つ路線の中で一番短い香港-広州のターンでした。
片道30分の超短距離線です。
ブリーフィングルームに向かうと、なんと集まったクルーは全員スタンバイ。
こんなことなんてあるのかと話しているうちにブリーフィングが終わり、駐機場に向かい、装備品などのチェックを終えて、お客様の搭乗を待っていたのですが、お客様がなかなか来ません。
すると、パーサーからアナウンスが入り、行きの便はお客様ゼロで飛ばすとのことでした。
どうやら、前の日の夜便の復路(広州-香港)が欠航になり、その影響で乗れなかったお客様を乗せるために私たちが呼ばれたようです。
ひどい大きな揺れに次々と襲われる!
11人のクルーは一斉にビジネスクラスに集まり、クルーミールやお菓子、飲み物を広げて映画を見たり、他のクルーとお喋りを楽しんでいると、あっという間に広州に到着しました。
広州に到着したら、まさかの大雨。
周りを見渡すと、大雨の影響で出発できず待機を余儀なくされている飛行機が沢山いました。
満席の機内でお客様と共に1時間ほど待ち、ようやく出発許可。
しかし、離陸後すぐに経験したこともない程の大きな揺れが次々と襲ってきました。
窓から雷の影響で外がひっきりなしに光っているのが見えました。
気分が悪くなってしまったお客様はお手洗いに行こうと立ち上がりますが、クルーシートにしがみついていることが精一杯…
そんな中、シートベルト着用サインが消えるはずもなく、お手洗いに近いクルーシートに座っているクルーは座席に戻るように何度も言います。
お客様は持っているビニール袋をあちこちで回しながら、必死に背中をさすり合い、赤ちゃんや子供たちは泣き暴れ、急降下の際にはみんなが叫ぶ、その様子はまさに地獄絵図でした。
まさかの!?飛行機に雷が落ちた!?
すると突然、ドン!という大きな音と共に物凄く明るい光が機内に一瞬入ってきました。
そうです。
雷が飛行機に落ちたのです。
その雷は小さかったのか、機内で焦げ臭いニオイや火災になることもなく、何事も無かったのが不幸中の幸いでした。
このとき既に離陸から1時間以上経っており、結局シートベルト着用サインが消えることもなく、香港国際空港に着陸。
普段は30分のフライトも、この日は着陸待ちの他の便の影響もあり、1時間半かかりました。
到着してシートベルト着用サインが消えると、嘔吐物から身を守るために、各ギャレーのパーサーがクルーにマスクを配ります。
お客様を見送り飛行機を降りると、ボーディングブリッジで同じ機材を使用する別のクルーが待機していました。
その中になんと仲のいいクラスメイトが!!
大変だったフライトの後に彼女の顔を見て思わず涙。
彼女たちは福岡に行く予定だったのですが、そのとき既に6時間の遅延。
結局、搭乗ゲートで何時間も待機し、福岡便は欠航に。彼女たちは中国の別の都市に向かったものの、労働時間の関係で香港に帰れなくなってしまい、そこでAOG(Aircraft on Ground)となってしまったそうです。
この日は私たちだけではなく、香港ベース全てのクルーにとって忘れられない1日となりました。