私は以前、中東ベースの外資系エアラインで働いていました。
世界100カ国以上の多国籍クルーに混じって、日本人クルーでも世界中のデスティネーション(旅行目的地・旅行先)に飛ぶことができます。
日本フライトは月に1回ほど入れば当たりといった感じで、実はそんなに頻繁に入るわけではありませんでした。
それぞれのデスティネーションによって、もちろんお客様の国籍や飛行機を利用する目的(バケーション、仕事、里帰り等々)も様々。
そのため、文化、宗教の違いから対応に戸惑ったり、驚くようなこともしばしばありました。
アジア人女性をメイド扱い!?
あれは確か、アブダビかドバイ行きのフライトだったかと思います。
搭乗が始まって、私はキャビンでお客様のご案内をしていました。
そこに白いカンドゥーラを着てサングラスを掛けた20〜30代のアラブ系の男性のお客様が、機内持ち込みのキャリーバッグを引いてご搭乗されてきました。
前方のお席のようでしたので、機内中央にいた私は他のお客様のご案内とお手伝いをしていました。
すると突然その男性のお客様が「プシュッ、プシュッ」と口笛のような合図をされたのです。
こちらを見て合図をされているようでしたので行ってみると、通路に置いてあるご自分のキャリーバッグを指差し、これを頭上の荷物入れに入れろというように人差し指だけを使って合図をするではありませんか。
もちろんどこかお怪我をされている様子でも、助けが必要な様子でもありません。普通の成人男性です。
私は、まず呼ばれた時の口笛めいた音に少し不快感を感じた上、無言で指図されたことに、おおげさに言えば私自身の尊厳を踏み躪られた感覚を覚えました。
このようにアジア人の女性というだけで、アラブ圏ではメイドと同じ感覚で接してこられるお客様(男性、女性)もいらっしゃり、戸惑うこともありました。
もちろん、そのような国々にはフィリピンやスリランカ、タイ、ネパール等々の国々からのメイドさんが大勢出稼ぎに来ています。
ですので、機内においてもそのような感覚を持たれるのも仕方のないことなのかもしれません。
しかし、客室乗務員の私たちは決してお客様の使用人ではなく、機内の安全を守り、快適なフライトを提供する空のスペシャリスト。荷物の収納に関しては。必ずお客様ご本人に動いていただいて、それをお手伝いをするという形で対応しています。
もちろん、そちらのお客さまにもなるべく失礼の無いように、ご自分で荷物を収納していただくようお願いしました。
また、この「プシュッ、プシュッ」という合図、中東だけではなく、アジア方面確かインドやパキスタン人のお客さまでも使う方が多く、機内のあちこちからこの音が聞こえてきます(笑)
お国も変われば合図の仕方も様々です。
機内トイレが大変!トイレ専任クルーも登場
またバングラディッシュのダッカ行きフライトなどは、中東圏に出稼ぎに来ているお客様が多買ったのですが、毎回機内トイレが大変なことに。
あるフライトではトイレ専任クルーまで登場し、彼はフライト中トイレに張り付いて、お客様がトイレを使われる前に使用方法を説明するという状況もありました。
どこをどう考えたらそこが便器になるのかという不思議な使い方をされるお客様もいらっしゃり、壁じゅうが尿だらけということも!トイレ掃除が恐怖だったことを覚えています。
ただ、そうそういったお客様はただ飛行機に乗り慣れてないというだけの話で、あまり英語が通じなくとも身振り手振りを交えて説明すると、次からは綺麗に使って下さるのですが…
何せ数が多いので、フライト中トイレを綺麗な状態に保つのが至難の業でした。
ブランケットが頭巾に!?持ち帰ろうとする方も…
また、長時間フライトですと機内の温度が少し低めに設定されていることもあり、肌寒く感じることがあります。
ブランケットの使い方も様々。
ダッカ行きのフライトでは、頭巾のように頭から被るお客様が多く、機内を見渡すとなかなか異様な光景です。
到着後もそのブランケットを頭から被ったまま、飛行機を降りていかれるもので、ブランケットは置いていって頂くようクルーが制止することも。
ブランケットで、機内食を包んでお持ち帰りされようとするお客様もいらっしゃいました。
お国が変われば、文化や感覚、価値観も様々。
世界中の就航先にフライトすることで、私の視野も広がりましたし、ちょっとのことでは動じない図太さも身につきました。