病気

機内では様々なことがあります。

機体のトラブルがあったり、不審な乗客がいたり、そして体調の優れないお客様には頻繁に遭遇します。
体調不良とひとくちに言っても、乗り物酔いから怪我、持病が発症する方など様々です。

そしてその応急処置をするのは、キャビンの安全を守る私たち客室乗務員の仕事の一つです。

今回は、私がクルー人生の中で出会った急病のお客様のお話を1つご紹介します。

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女性のお客様が泡を吹いて失神

フィリピンー日本線に乗務した時のこと。
ほぼ満席の機内でミール・リカーサービス、免税品の販売をなんとか終え、私たちは交代で休憩に入っていました。

機内前方をチーフと私の同期のAさん、後方を私と後輩のBさんで担当していました。

Aさんが機内を巡回していたところ、6列目で動きを止め、驚いた様子でお客様に話しかけているのが後方から見えました。

どうしたのだろうと思っていると、休憩中だったBさんが見に行ってくれるとのこと。

Bさんがたどり着くと前方ではチーフとAさんはO2ボトルを取り出し6列目へと急いでいました。

Aさんから事情を聞いたBさんは前方からコールをくれました。
なんと20代と見られるフィリピン人の女性のお客様が泡を吹いて失神している、Bさんはそのまま前方で対応するとのことでした。

ほぼ満席の機内でしたが、二人で協力してお客様に座席移動のお願いをし、当該のお客様を寝かせ、ファーストエイドの手順に従い必要なものを持って処置にあたっていました。

突然のことに動転しましたが、私の役目は後方キャビンを守ること、周囲のお客様を落ち着かせること、そしてキャプテンへ連絡することだと思い、コックピットへコールし情報を伝えました。

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20代ではなく15歳の妊婦さんだった

チーフがドクターPAを入れてお医者様を探したところ、幸いフィリピン人のお医者様がいらっしゃいました。すぐにドクターに対応していただき、AさんBさんはそのサポートにあたりました。

意識が戻ってからも、何度も何度ももどされ、ご気分は優れないようでした。

少し容態が回復し、Aさんからそのお客様にお話を聞いたところ、1人で日本に向かっており、驚いたことに15歳で妊娠しているとのことでした。

会社の規定上、国際線に一人で搭乗出来る年齢は15歳。
ぎりぎりクリアしていたものの、もしかするとその規定にも触れていたかもしれず、さらに妊婦であれば安全のため申告が必要で、週数によっては搭乗出来なかった可能性もあります。

まさかの事実にクルー一同あっけに取られました。

クルー皆で反省したこと

容態が悪化すれば、ダイバート(目的地とは別の空港へ降りること)も考えるとキャプテンから連絡をもらいましたが、幸いそのまま着陸できそうでしたので、O2ボトルを設置したまま着陸することになりました。

体調不良はおそらく妊娠のためであると思われましたが、万が一のために救急車を用意してもらい、検疫の方も機内へ来られ、当該のお客様はそのまま検疫へと向かわれました。

見た目には10代にも、また妊娠しているようにも見えませんでしたが、お客様の安全を守るのが私たちの使命であり、出発の前に気づいて対応しておくべきでした。

クルー皆もっとしっかり観察しておくべきだったと反省しながら帰路につきました。

上記に限らず、日々フライトをしていると、体調不良のお客様には遭遇します。

いざと言う時に焦らないようにするためにも、乗務する前にはファーストエイドの手順や、自分が応急処置を行うのでなくとも、もしもの時にはどのように動くべきかを必ずリマインドしておきたいですよね。

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