飛行機

私はGSとして航空業界で働き、今は退職しています。
今でも忘れられないのが、あるお客様のことです。ふと思い出すと心が温かくなります。

何千、何万とお会いするお客様のなかで、優しい気持ちにさせてくれた方…
そして、そんなお客様と関わることができるGSというお仕事は本当に魅力的な仕事です。

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あるおじいさまに相談されて…

入社して間もない頃のことです。
私は訓練中で、緊張しながらカウンターに立っていました。

退社時間が近づき、今日も何事もなくミスなく帰れるぞ!という時に、チェックインに来た80代くらいのおじいさま。かなり耳が遠いおじいさまでした。

するとある相談をされました。

マイレージが貯まっていて、マイルを別のポイントに変えたいのに手続きが出来ないとのこと。

理由を聞くと、インターネットは使える環境にはなく、電話をしても耳が遠くて話が出来ないとのことでした。

事情が事情のため色々な部所へ確認したところ、ポイントへ変更する手続きを行えることになりました。

その時点で当の退社時間は過ぎていて、せっかくミスなく残業なく帰れるところだったのに!と少し心はもやっとしていました。

『交換の手続きができましたよ』と、おじいさまにお話したところ、ほっとした様子で笑顔でありがとうと仰り、飛行機に乗って行かれました。

喜ばれていたので、少しは良いことできたかなと、もやっとした心も少し晴れ、無事その日の業務は終了しました。

半年後におじいさまと再会!

それから半年後、そのおじいさまが、またカウンターへやってきたのです。
すっかり以前の件を忘れていた私でしたが、おじいさまが私のことを覚えていてくださり、『おかけでポイントを利用できた』とわざわざお礼の言葉をくださったのです。

その時の私はプライベートで、冬道を運転中思わずスリップ。
怪我こそありませんでしたが、車は傷つき、修理代は数十万。

プライベートを仕事に引きずってはいけないのですが、気分はげんなりしていました。

そんな時に、おじいさまが自分のことを覚えてくださっていたこと、一人のお客様の役に立てたこと。
褒められることも少ない、新人の私には本当に嬉しい出来事で、プライベートで傷心した心が、あろうことか仕事で癒されたのです!!

人の役に立つことの嬉しさをその時初めて身に染みて実感した瞬間でした。

おじいさまは、『自分はもう歳なので、あと何回ここに来られるかわからない』とおっしゃっていましたが『まだまだお元気じゃないですか!またお待ちしてますね』と言ってお見送りしました。

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さらに半年後、元気でいらっしゃることがわかって嬉しかった

それからまた更に半年程たったでしょうか。
『◯◯様(おじいさま)というお客様に、(私に)よろしく伝えて』と言われたよ、と先輩から伝えられました。

会えなくて残念でしたが、まだ元気でおられるんだなと分かり嬉しくなりました。

時々仕事を辞めたいなーと思ってしまうことがあるけれど、このおじいさまが元気に空港に来てくださる限り、わたしも元気に働いていたい。そう思うことが出来ました。

おじいさまが私を訪ねてきてくださった時、私が辞めてしまっていたら、おじいさまが残念に思うのかな…と、少し自信過剰かも知れませんが、そんなことも考えていました。

その後も何度かおじいさまに会うことが出来、毎回ほんの5分ほどの会話ですがお話をすることもできました。

それから7年の月日がながれ、私は退職しました。
いつからか、もう数年間おじいさまにお会いしていなかったなあと、ふと思い出しました。

まだどこかで元気にしてるといいなあと思うと共に、おじいさまのお陰で私も仕事を続けることができたなあと改めて思い出しました。

おじいさまにありがとうと伝えたかったと少し切なさも感じています。

何千、何万とお会いするお客様のなかで、優しい気持ちにさせてくれたおじいさま。そんな人との関わりが出来るお仕事。

本当に素敵なお仕事です。

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