CAの訓練。
テレビ番組などで特集されたり、ドラマに取り上げられることもあります。
鬼教官のスパルタ訓練、というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。
おおよそイメージ通りではありますが、各社で訓練の期間や内容が異なるのも事実。
今回は国内系大手エアラインで訓練を体験した筆者が、CAの入社後の初期訓練に関してお話ししていきます。
基礎教養・サービス訓練について
訓練期間は約2ヶ月。
その間に大きく分けて基礎教養・サービス・エマージェンシーの3項目を訓練していきます。
基礎教養には航空機の知識や敬語、英語、マナー、メイクなどが含まれます。
英語は接客英語で、応用力は必要なものの、まずはとにかく丸暗記することが求められます。
メイクのクラスではメイク道具を持ち寄り、他の同期と似合いそうな色を交換したり、髪型の作り方を教えてもらったり、ハードな訓練の合間の楽しい授業でした。
サービス訓練では機内の模型(モックアップ)を使用して、実際の業務と同じようにカートを引いて離陸から着陸までの一連の業務を練習していきます。
私が一番苦手としていたのがこの訓練でした。
ほとんど見たこともないような機内の装備を目の前にしても実感が湧かず、何度やっても上手く出来ず戸惑ったのを覚えています。
担当教官が厳しく(優しさからですが)、叱られることも多かったので落ち込みました。
とはいえ、なんとかラインアウトできてからは慣れもあり、他の同期には劣るものの、最終的には後輩を教えることも出来ましたので、努力は必要ですが焦らず自分のペースで慣れていくと良いと思います。
エマージェンシー訓練について
エマージェンシー訓練はモックアップやプール等で行います。
サービス用のモックアップと異なり煙が出たり、暗転したり、スライドが出たりします。
おそらく一番ハードな訓練ですが、これを乗り越えると制服を着用することが出来、クルーへ一歩近づいたような気がします。
これに関して言えば年1回(基本的には自分の誕生月にアサインされる)、きちんとしたパフォーマンスが出来るかのチェックがあります。
一人前のクルーであれば出来て当然ではありますが、そこは人間、初期訓練から何年も経ってしまうと忘れてしまうこともあります。
ですが、年1回のチェックで新人もベテランもごちゃ混ぜでパフォーマンスすることで、初心を思い出し気を引き締める効果があるのだと思います。
厳しく優しい教官が現役クルー
教官は現役クルーで、訓練の間のみ教官として地上職に就いています。
担任が1人おり、教科ごとにそれぞれ別の教官が教えに来る形で、座学は1人、サービス訓練は2人、エマージェンシー訓練は3人アサインされていました。
エマージェンシー訓練といえばスパルタな教官が担当するイメージがあると思いますが、私の経験では、厳しくも優しい教官たちという印象があります。
比較的若い教官たちだったので、私たちの気持ちもわかってくれて同志のように接してくれ、悩みも話しやすくとても頼りになるお姉さんたちといった感じでした。
ただ普段は穏やかでおっとりした教官もこの訓練となると人が変わったようにキビキビとして怖かったのを覚えています。
人の命を守る訓練なのだから当然ですよね。
今思い出してもとてもプロ意識の高い素敵な教官たちでした。
教官は現役クルーと申しましたが、実際に訓練後は教官たちも空に戻っていきますので、ラインアウトしてから一緒に乗務することも多々あります。
最初はどことなくうれし恥ずかしという気持ちですが、慣れてくると1クルー・1先輩として見られるようになってきます。
初期訓練のあとも訓練は続く!
加えてファーストエイド(応急手当て)の訓練があります。
機内では本当に意識を失ってしまうお客様も多くいますので、この時にしっかり練習しておくことで後々焦らずに済みます。
余談ですが、私の同期はプライベートで出かけている時に駅で倒れた人を心肺蘇生させたことがあります。他にも怪我の対応など日々の生活でも使えることを教えてもらえますので(機内にしかない装備品もありますが)、きちんと覚えておくと便利ですよ。
今回は入社後すぐの初期訓練のお話しをしましたが、訓練とひとくちに言っても、新人訓練から国際線乗務のための訓練、ファーストクラスを担当するための訓練、チーフになるための訓練等、多岐に渡ります。
常に向上するため、新人訓練が終わったから終了、ではなく、ステップアップするたび訓練を受け続けることになります。
時にはモチベーションが下がることもあるかと思いますが、せっかく入社するからには訓練でさらに技術や知識をブラッシュアップして、立派なクルーを目指したいものですよね。