他の業種の仕事でもそうであるように、航空業界の整備士にも色々な人がいます。
約10年前、ある空港で一緒に仕事をする事になった一人の整備士が、今まで知り合った整備士の中で一番のプロ整備士です。
大人しい整備士(課長)が吠えた!
その整備士は普段、無口で大人しく、こちらから話をかけないと話さない課長です。
何を考えているのか分からないコミュニケーションに欠ける整備士と捉える職員もいますが、整備の腕前は一目見ただけで凄いと誰でも分かるほど一流なのです。
ある日、出発した飛行機が離陸する前に機体に不具合が発生し、駐機場へ引き返してきました。日常の中でも不具合が発生し引き返してくる事はあります。
しかしこの時ばかりは突然課長が吠えました。
それは、コックピットから無線で「ノーズギア(航空機前方の車輪)の不具合で駐機場まで戻れないかもしれない」との一報を受け、課長は整備士全員に「外で待機」と言ったのです。
あの課長が吠えたと周囲はざわつき、難しい整備作業になりそうだと誰もが分かるほど緊迫した一言でした。
お客様と地上係員のことも考えるすごさ
私は鳥肌が立ち、作業を見学。
課長自らその飛行機を駐機場で受け入れ、コックピットとインターホンで何やら話をして整備作業へ。
キビキビした動きに、的確な指示に、これが課長の凄さかと思いながら見学していると、一人の整備士に「お客様がロビーで待っている。地上係員の負担も考えて、的確で無駄の無い作業をしろ」と言うのです。
整備士には色々なタイプの方がいますが、多くの整備士は職人を意識されている為、飛行機の事ばかりしか頭にありません。しかし課長はお客様の事を念頭に置いており、そしてSTAFFの事まで気にかけている・・・
ただただ言葉に素晴らしいと感激している最中、飛行機の不具合をすぐさま突き止め、整備作業を短時間で施し、最小限の遅延で飛行機を出発させました。
プロの仕事に感激
後に直接課長になぜ短時間の作業で出発できたのか聞いたところ、以前にも何度か同様の不具合を経験しており、不具合の原因がある程度絞り込めたからあの時間で出発させることができたとの事でした。
本当のプロを目の当たりにし、いい勉強をさせてもらった事に感謝の気持ちでいっぱいになりました。決してコミュニケーションが取れない課長ではありません。
後で知りましたが、ただ内気なだけなのです。