実際のところ、空港内の飲食店というのは少々値段が高いです。
これは仕方のないことですし、お客様たちも承知のことなので普段はなんの問題も起きません。
しかし飛行機で旅をするのが初めてという方の場合やはりこのお値段の違いが気になることがあるようなのです。
空港内のコーヒーショップでの出来事
私が働いていたコーヒーショップは、いわゆる大手のチェーンの1つだったので、普通の店舗との値段差はありません。
しかし一般の店舗の場合、どうしても普通の街のお店よりも値段が高く感じる、実際に高いのも事実です。
ある日のこと、ランチタイムがそろそろ終わって、お客さんの波が引いたあたりのことでした。
二人連れの、多分50代くらいの女性が入店されたのです。
ランチ後のコーヒーを飲みにいたらしたんですね。実際に、普通のコーヒーを2杯注文されたのです。
空いた時間帯でしたし、注文の時の雰囲気もいいお客様たちだったので、お席まで飲み物を運びますと言いましたら、大変喜んでくださいました。
そしてコーヒーが出来上がってそれを運んだ時にも、きちんとお礼を言ってくれた本当に感じの良いお客様だったのです。
でもふと耳に挟んだ会話が、ちょっと怖かったですね。
「あの店ってボッタクリの感じがしない?おかしいよねあの値段」
「ちょっとあれはないでしょ、どう見たって仕入れの1がけってところよ」
飲食店関係者らしきお客様からのクレーム!?
飲食業の値段の相場は、3がけが普通です。
つまり、代金の3割が原料費ということなんです。
そんな専門用語を使ってるところを見ると、お客様たちも飲食店の関係者のようでした。
「私達がこういった場所に慣れていないって思って、値段上乗せしたんじゃないかしら」
「それそれ、私も思ったし。これって訴えたほうがいいかも」
「クレームどこに出せばいいかしら」
「ねえあなた、あなたはどう思う?」
何とこちらにお鉢が回ってきました。
どのお店のことを話されているかも不明でしたし、滅多なことは言えません。
なので、
「お値段に関してはお店によりますので」
当たり障りなく答えを返すと、
「でもこのお店はお値段同じじゃない」
と言われてしまったんです。
「いえ私どもはチェーンになっている店ですので、当然お値段に関しましては同一になります」
この答えではちょっと不満そうでしたが、それでもその場は開放してくれました。
目が肥えている業界関係者は油断できない
飲食関係のお客様の場合、自分たちも苦労している人たちだと、私達に対しては丁寧に接してくれる人が多いのです。
しかしその分目が肥えているので、もちろん舌も肥えている人が多いので、油断できないのが事実です。
このお二人の場合、どうやら飛行機を利用した旅の経験が少なく、空港内で飲食というのはしたことがなかったようです。
なのであのような感想になったのでしょうが、その後本当にクレームを出されたかどうかは、残念ながらわかりません。
でもこのお二人の場合はまだ本当に丁寧な方で、実はその場で「何だこの値段は」と叫んだ人もいたそうです。
かなり昔のことだったけどと、古くから空港内のレストランで働いている人に聞きました。
こうしたクレーム、多分邪気がない分お店側も困るだろうと思ったものです。