私が運航管理者の補佐をしている時代の話です。
運航管理者(ディスパッチャー)の仕事に関しては、こちらの記事を参考にしてくださいね。
運航管理者は、一年に1回以上コックピットに搭乗して、航空路の飛行慣熟訓練を実施しなければなりません。
飛行慣熟訓練では滅多に悪天候に見舞われることはありませんが、実施してきた訓練の中でも唯一大雪で航空機が着陸不可能な状況の直前で目的地空港に着陸した経験をしました。
大雪の為に欠航になる可能性大だと思ったのに…
朝、ある空港から訓練する便に搭乗する予定でしたが、目的地である新千歳空港が大雪の為に、2本のうちの1本が除雪作業により閉鎖となり、残りの1本で出発と到着の運用を行っている為、欠航になる可能性があると担当の地上係員から伝言がありました。
とにかく待機するしかなく、空港内で待機する事となりました。
すると待機中に、既に新千歳空港に向かって出発した私が搭乗する予定の前の便が、大雪の為、着陸出来ずに引き返してきたのです。
今日は欠航になる可能性大だと想像しながら先に朝食を食べにレストランに行き、結果報告を待つことにしました。
待つ事2時間後、連絡が入り、雪は小康状態になることが予測される為に、搭乗する便は就航するとのことでした。
大幅な遅延で新千歳空港へ出発
「今日1日大雪でしょ」と思いながら、半信半疑で事務所へ向かい再度担当者に確認を取ると、やはり就航するとの事。しかし出発時間を調整しているので、何時の出発になるか分からないとの事でした。
それから更に1時間後に出発時間が決定し、大幅な遅延で出発することになりました。
事務所で出発の準備を整え、コックピットに乗り込み、心の中では雪で戻ってきませんようにと祈り、深呼吸し出発しました。
やがて新千歳空港上空に近づくと、周囲には沢山の旋回している飛行機がいました。それを見た瞬間に、引き返す事が頭をよぎりました。
ざっと10機以上は旋回していました。
しかし機長は新千歳空港に着陸するとコックピット内で宣言され、ホッとした事を覚えています。
滑走路が見えない!!ギリギリで着陸
他の機と同様に旋回を開始してから1時間以上経過し、順番であと5機目となりました。
そして燃料が少なくなってきて、万が一着陸不可能だった場合は、引き返さずに目的地を函館に変更すると機長が言いました。
函館に変更したら自分でホテルを手配しなければならない、最悪な先走った思いが込み上げ、何としても降りてくれとその一心でヒヤヒヤでした。
既に出勤してから10時間以上が経過して疲労もピークに達するその時、着陸の順番がきました。
降下を開始し、雪雲の中、機体を揺らしながら飛行し間もなく滑走路が見える頃に。しかし滑走路が見えないのです。ライト一つ見えないのです。
絶望的だと思った矢先、着陸限界高度ギリギリで滑走路のライトが見え、そのまま着陸。その瞬間、肩の力が抜けて安心しましたが、駐機場は他の飛行機で埋め尽くされており、駐機場に入る事ができず、地上で待機に。
しかしその日は降りられただけ幸運でした。
ちなみに私の後に着陸を試みた飛行機は雪で視界が悪く着陸できませんでした。本当に幸運な一日でした。