私が地方の空港でグランドスタッをしていた時に出会ったお客様のお話です。
その日は1日カウンター業務の日でした。
地方空港なのでフライトがない時間帯はカウンターも空いておりただ立っている時間も多々ありました。
そんな時に、突然40代くらいの男性のお客様がカウンターにいらっしゃいました。
空港オタクのお客様
その男性のお客様は、突然大学ノートをバッグから取り出し、ノートを開いて私達に差し出して来ました。
何がなんだかわからず「こちらは？」とお客様に質問すると「航空会社名とサインと日付を書いてもらえますか」と言われ突然の事に戸惑ってしまいました。
私達が戸惑っていると、その方は前の方のページを開き「怪しい者じゃありません。ただの空港おたくです」と…その方が開いたページをみると全国のいろいろな空港のグランドスタッフのサインがびっしりとかき集められていました。
さすがに私達も目を見開いて驚き、一ページ目から見させてもらいました。
本当に沖縄、熊本、福岡、羽田、関西、小松そして屋久島、喜界島、、、等々、大きな空港から地方の小さい空港まであらゆる空港のスタッフがそのノートにサインを書いてました。
空港オタクのお客様がサインをもらう理由
よくよく話を聞くと…
小さい頃から夏休みなどご両親は仕事なので一人で飛行機を利用し、遠く離れた祖父母の家に遊びに行っていたそうです。
その時にグランドスタッフがお世話をしてくれて、子供ながらにすごく感謝の気持ちをお持ちになり、それからグランドスタッフがその方の憧れの的になったそうです。
そのため各地の空港を訪れた際に航空会社のスタッフにサインをもらってきたとのこと。
目標はすべてのグランドスタッフにサインを貰う事とおっしゃってました。
正直、最初は少し気持ち悪いなと思ってしまいましたが、お話を聞くとグランドスタッフに対しての敬意の気持ち等がとても伝わり、逆にそんなに感謝していただきありがたいという気持ちになり、なんだかホッコリした気分になりました。
マンネリ化していた気持ちに変化が！
そして私達もそのノートにサインをさせていただきました。
私達の仕事はお客様を無事に目的地までお送りする事です。
毎日、小さなお子様から年老いたお客様、ご旅行やビジネスなどさまざまな年齢、様々な飛行目的の方たちが空港を訪れ飛行機を利用されます。
時には流れ作業のように接してしまうこともあった自分にその時気づかされました。
私達にとっては毎日、毎便同じ作業、同じご案内をしておりますが、お客様にとってはひとつひとつの場面が大切な時間かもしれません。
はじめてのフライトの方もいらっしゃるでしょう。
これが最後の旅行と決めてこられる方もいるかもしれません。
そんなお客様にとっては小さい頃の体験でグランドスタッフに憧れるようになってサインを集めているお客様と同様に私達の接客によって空港での時間がすごく楽しいものになるか嫌な思い出になるか決まってしまうかもしれません。
自分の会社の飛行機を利用されるお客様だけではなく他社のお客様、そして空港に見送りにきたり、遊びに来たお客様、全てのお客様にこの空港は来るだけで楽しいと思って頂ける様に頑張りたいと改めて感じました。
自称「空港おたく」のお客様との出会いは、マンネリ化していた私の気持ちを初心に戻してくれた瞬間でした。”
