VIPフライトの対応は緊張の連続/航空業界スタッフ体験談

毎年、羽田空港には各国の要人が多く訪れます。
要人とは国王、大統領、国家主席、皇太子、首相、王族や副大統領等を指します。

航空会社は要人が訪れる前に受け入れ態勢を万全に整える為に、当日の体制について何回も打ち合わせを実施します。

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息が詰まる会議と緊張する担当

打ち合わせの中でそれぞれの持ち場が決められ、任務に就きます。
要人がお越しになられる前の打ち合わせからその会場のムードはピリピリしています。

私はいつも息が詰まる思いで出席していました。
二度と参加したくない会議と思いながらも、いつも参加していました。

私の担当は、要人が飛行機から階段を使用し降機しますが、その階段下から真っすぐに赤いカーペットを10m以上敷き、カーペット周辺に金色のスタンション立てて、ロープを張ることです。また、雨天時には飛行機のドアから雨で濡れないように傘だしをする事です。
いつも決まってこの担当を受け持ちます。

そしていつも要人を目の前にした時、私の緊張は最高潮に達します。

一番緊張したVIPフライト

数々のVIPフライトの中で一番緊張した時がありました。
それはロシアの大統領が日本を訪問された時の事です。

事前の情報で大統領のSP(警護)は4人で、SPは拳銃を所持している為、周囲を走ると誰構わずに撃たれる為、何があっても絶対に走ってはいけないとの説明を受けました。
その説明に鳥肌が立ち、誰か代わってくれないかと、心で叫びました。

いままでに走ったら撃たれるなんて事は聞いたことがなかった為、内心ビクビクです。

そしてVIPフライト当日を迎え、その日は雨が降っていました。
当然傘出しをしなければなりません。

傘出しということは飛行機のドアが開いて大統領を最初に目にするのは私じゃないか。その事が分かった瞬間に「近くで撃たれたくない!」その事だけが頭をよぎりました。

SPの「DOWN!」という一言で…

いよいよ大統領を乗せた飛行機が到着し、飛行機のドアの横で待機。
そしてドアが開いた瞬間、「DOWN!」とSPに言われ、すぐさま階段をゆっくり下りて見送りました。

DOWNと言われた時には心臓がドキドキで恐怖でした。
私はこの時、何も仕事をしていない事に後で気付き、何となく恥ずかしい思いをしました。

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